エジプトの団体旅行に参加したことがある人なら、ほぼ 100% 経験するのがこれ。
観光の途中で、なぜか突然お土産物屋さんに連れて行かれる現象…
しかもただの店ではありません。立派な建物、職人とやらの実演付き、ウェルカムドリンク付き。「博物館」や「工房」という名前がついていることも多い。

カイロならパピルス博物館。ルクソールならアラベスクや石彫りのお店。ヨルダンなら、マダバのモザイク博物館 (工房?) や死海グッズを売っているお店などが代表的でしょうか…
一見、文化体験っぽいのですが…終わってみると、なぜか目の前に高額商品。
「え?これ、買わんとあかん流れ?」
はい、その通りです。「買わんとあかん流れ」を作るのが目的です。
エジプトの個人旅行も例外ではない
「団体旅行はね~そういうもんだよね」そう思った方、申し訳ない!
私を通してエジプト旅行を申し込まれる方は個人旅行がほとんどですが、それでもガイド付きであれば、この “お土産屋さんイベント” はほぼ確実に発生します。
私はエジプトの旅行会社に、何度も何度もこう言っています。
「頼まれてもいないのに、お客様をお土産物屋さんに連れて行かないで‼」
が、連れていく。必ず。
ちなみにヨルダンでは、ガイド付きより英語ドライバーのみのお手配をお勧めすることが多いので、この問題はかなり少ないです。またヨルダンの観光業界の構造は、エジプトよりもう少しシンプル。
じゃあエジプトでもガイドは要らない!と思われるかもしれませんが、エジプトの観光地ってガイドがいないと結構大変な目に遭うようになっています。というと語弊がありますが…つまり、ガイドに案内してもらうという前提で観光地の仕組みが成り立っています。
一人でうろうろしていると、観光地に到達するまでに物売りたちに 30 秒ごとに声をかけられます。観光地に逃げ込んでも、そこにいるのはやはり「営業マン」化したアラブたち。誰も放っておいてくれない!マジ透明人間になりたい!…という構造は、別記事でも扱っています。
ガイドが悪い?いや、「構造」が悪い
ここが一番大切なところ。
ガイドが悪いとか旅行会社がズルいとか、そういう単純な話ではありません。エジプトの観光地に君臨する悪しき構造なのです。ま、ヨルダンもそうなので、エジプトというより中東の悪しき習慣といった方がいいか。
ガイドは、同じ観光地に何年も、何百回も通います。そこには、何十年も店を構えている店主たちがいます。
アラブ社会では、人間関係がとても重要です。ガイドが店の前を素通りすることは、無視や失礼に近い行為になります。
だからガイドは、
- 立ち寄る
- 挨拶する
- お客さんを紹介する
これが「アラブ式の社会的マナー」なんです。
さらに、ガイドが「この店は信頼できる」と言えば、売上が立ちます。すると店主は「このガイドはいい客を連れてくる」と評価します。
そして当然、売れたらガイドにはかなりのコミッションが入ります。やっぱり最終的にはお金か!と思いますよね。はい、結局お金です。トホホ…
ノート 1 冊 70 ドルの世界
実例を出します。カイロのパピルス博物館で、お客様がノートを1冊買いました。値段は、70 ドル。
エジプトの物価から考えると、あり得ない金額です。現地に住んでいた目線で個人的な意見を言わせてもらうと、3ドルでも高い。百歩譲って 10 ドルなら…まぁ…というレベル。
それが 70 ドル。
ということは…? そう、ガイドに入るコミッションも、かなりの額になります。
この仕組みがある限り、「とりあえず連れて行こう」という気持ちがガイドに生まれるのは、止めようがありません。
私がどれだけ「連れて行くな」と騒いでも、根本的な構造は変えられないのです。
旅行会社にクレームを入れても意味がない理由
「じゃあ旅行会社にクレームを入れればいいのでは?」と思われるかもしれません。
実は、それもほとんど意味がありません。なぜなら、旅行会社もこの仕組みの中で動いているからです。
ガイドがコミッションをもらって満足し、店主と良好な関係を保つ。ガイドはどこの旅行会社から派遣されているかを話しますので、ガイドの評価は旅行会社の評価にもなる。それで現場が回るなら、それでいい、というスタンスなのです。
結果として、私だけが「ギャーギャーうるさい日本人コーディネーター」になるという構図になります…。
解決策: 大阪のおばちゃん方式
では、どうすればいいのか。答えはとてもシンプルです。買わなければいい。

あの場所では、
- ウェルカムドリンクがもらえる
- トイレが使える
- ちょっと涼める
そう割り切ってください。
そして、「み~て~る~だ~け~」の大阪のおばちゃんモードで OK です。あ、これで世代がバレますね…。今の若い人には通じない関西ネタ (笑) かも。
ま、つまりは、笑顔で見て、説明を聞いて、何も買わずに出る。それで全く問題ありません。
でも、買う人を否定したいわけじゃない
誤解してほしくないのですが、私は「絶対に買うな」と言いたいわけではありません。実際に、喜んで買われるお客様もおられます。
たとえば、ルクソールのアラベスクのお店で、とても大きな壺を買われたお客様がいました。その方は歯科医院を経営されていて、「医院の玄関に飾る大きな壺を探していた」とのこと。
それなら話は別です。目的にぴったりのものが見つかったなら、それは素敵な買い物です。旅先で出会ったものが、日本での生活の中でちゃんと居場所を持つ…。それはむしろ理想的なお土産のあり方だと思います。
私が言いたいのは、ただ一つ。
買わされる必要はない。でも本当に欲しいなら、遠慮なく買ってください。
このスタンスです。
エジプトのお土産屋さんは「圧」が強いだけで、商品そのものがすべて悪いわけではありません。だからこそ、「自分が欲しいかどうか」を基準にしていただきたいと思います。
ガイドに遠慮しなくてよい理由
ガイドは、お客さんが「買うか・買わないか」をコントロールすることはできません。それは最初から分かっています。
それでもガイドが必ずお店に連れて行くのは、「連れて行くこと自体」に意味があるからです。
繰り返しになりますが、アラブ社会では、「人を店に連れてくる」「客を紹介する」という行為そのものが、人間関係の証になります。ツーリストは、ガイドのアラブ式 “社交辞令” に付き合っているだけ。でも正直なところ、
「あんたらの人間関係に、なんで付き合わなあかんの?」と思ってしまうかもしれません。
でも、アラブ世界では、日常生活のほぼすべてがこうした人間関係のネットワークの上に成り立っています。
誰と誰がつながっているか。
誰が誰を紹介したか。
誰の顔を立てたか。
それが社会を動かす “通貨” のようなものなのです。
買わなくても OK。立ち寄った時点で、ガイドと店主の関係は成立します。だから旅行者は罪悪感ゼロでいい。
主導権を握るのがアラブ世界攻略のコツ
エジプトでも、そしてアラブ世界全般でも、一番大切なのは 「主導権は誰が持っているか」 です。
ガイドや店主は、とても上手に「買う流れ」を作ります。笑顔、親切、熱のこもった説明、そして沈黙の圧。
でも、
お金を持っているのは、他でもない あ・な・た
アラブ世界では、押される人より、押し返せる人のほうが尊敬されます。遠慮して流されるよりも、笑顔で「No, thank you」と言えるほうが、実は一目置かれます。
主導権は、こちらにあります。
主導権を握るコツは「鈍感力」!
お土産屋さんで「何も買わない」と決めたとき、ちょっと空気が変になることがあります。店員さんのテンションが下がったり、ガイドが急に静かになったり。また、アラブはすぐに顔や態度に出るから…
空気が読めちゃう日本人にとっては、これが本当に嫌なんですよね。でも、気にしなくて大丈夫です。
だって欲しくないんだもん
お金を払う義務はありません。気まずさと 70 ドル、どちらが高いかは明らかですよね。
ちなみに欧米諸国の友達は本当にまったく気にしていないようでした。彼らの「鈍感力」がうらやましい…。ニコッと笑って「要らない。じゃあね」といえちゃうんです。営業トークなどをじっくり聞く必要もありません。ある程度で唐突にでも「よし、じゃあそろそろ出ようか」といえちゃうんです。
エジプトでは皆さんもこの「鈍感力」を心がけてください。
先に「買わない」と言っておくのは、実は有効
さらにおすすめなのが、お店に入る前にガイドにこう言っておくことです。
「今日は買わないよ」
これ、意外と効きます。なぜならガイドの頭の中では、「もしかしたら買うかも」という期待が常にあるからです。そこを先に潰しておくと、
あわよくば…。でも買わないっていってたよな…
と、ガイドの心のブレーキになります。結果として、過度なプレッシャーをかけられにくくなります。
実際に届いたお客様の声
以下は、実際にお客様から頂いたフィードバックの一部です。同じ体験をする人を増やさないため、事実として載せます。
お⼟産などの店ですが、連れて⾏っていただいたのは、全て観光客⽤の「ぼったくり」っぽい店ばかりでした。
あるいは、ぼったくりではなくて、単に⾼級品店だったのかもしれませんが、何もかも⾼かったです。ピーナツやデーツまでスーパーの 3 倍はしていたような。
これは旅⾏会社を通してツアーをお願いすると仕⽅がないことなのでしょうね。今までほとんど⾃分で計画した旅⾏ばかりだったので、よくわかっていなかったのだと思います。これからはもっとしっかり勉強して⾏かねば。
このご感想は、エジプトでガイド付きのツアーを利用した場合、普通に起こり得る体験です。
ツアー中に立ち寄る店が観光客向けであること、価格が現地向けではないこと、それ自体は珍しくありません。
エジプトでは、観光地の値段はあってないようなもの。「高い」と感じるかどうか以前に、そういう構造で動いているという前提があります。
お土産を買いたいと思われる方は、お土産の種類にもよりますが、カイロのごく普通のスーパーマーケットやモールなどに行かれるようお勧めします。
まとめ:鈍感力が、旅を救う
そりゃあ、際限なくお金を落としてくれるお客さんは、ガイドにとってはとても「やりやすい」存在です。
でもアラブ社会では、空気を読んで得をするのは、ツーリストではありません。この構造がある以上、それに巻き込まれないための方法はひとつしかありません。
鈍感力!
遠慮しない。
気まずさを気にしない。
「No」と言う。
その 70 ドル、その数万円。本当に、その瞬間の空気に負けて出す価値がありますか?欲しいものに払うなら、それは素敵な旅の思い出。でも「断れなかったから払ったお金」は、あとで必ず後悔します。
どうか、空気に飲まれないでください。
この記事が、皆さんのエジプト旅行を少しでも快適にするヒントになれば嬉しいです。
あとがき
私はツアーコーディネータとして、大切なお客様をできるだけお守りしたいと思っています。でもエジプトという国に根付いた構造を変えることはできません…。
中東という場所では、日本と同じ感覚で「何も起きない」「不快な思いをしない」という保証はできません。だからこそ、エジプト旅行の甘いも酸いも事前に書きたいと思っています。
私自身は中東で 17 年以上暮らして甘いも酸いも経験してきましたが、頭を打ちながら学んだことも多い。でもツアーに来られるお客様には苦い経験はしてほしくありません。多少酸っぱいのは許容範囲かなと(笑)。ですから、現地の甘いと酸いを事前にお伝えすることが皆様のお役に立てば…と願っています。


