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エジプトに移住して、気づけば丸1年が経ちました。毎回のことながら、振り返るとあっという間です。
これまでにヨルダンやレバノンで計7年、ドイツで2年、トルコで7年と暮らし、そして次に選んだのがエジプト。「どうしてエジプトに?」とよく聞かれますが、実はいつか住んでみたいとずっと思っていた国なんです。

中東ツアーのコーディネーターという仕事柄、これまでにもエジプトには何度も足を運んできましたが、「住む」と「訪れる」はまったくの別物。実際に暮らしてみて初めて感じること、見えてくるものが本当にたくさんあります。
長年アラブ世界で暮らしてきたので、アラビア語でのやり取りには困らず、アラブ人気質にもある程度慣れているつもりでした。おかげで、エジプトでの暮らしに特別な戸惑いはありませんでした。でも、それでもやっぱり…
“目から鱗” の連続‼
今回は、「アラブ世界をよく知っている」と思っていたのに、エジプトで私が改めて驚かされたことをいくつかご紹介したいと思います。
エジプト人って性格ええやん!
ヨルダンやレバノンはもちろん、周囲に多かったパレスチナ人やシリア人など、いわゆる「中東のアラブ」に囲まれて生きてきたので、自分ではアラブ人気質にもかなり精通しているつもりでした。でも、エジプトに来て驚いたのが、その “気質の違い” です。
一般的にアラブというと、感情的で自己主張が強く、プライドが高い…そんなイメージがあると思います。もちろん人によりますが、これまで私が接してきた多くのアラブがそうでした。
ところが、エジプト人はその逆。控えめで、おとなしく、穏やか。もちろん「アラブ的な一面」もありますが、そりゃあ当たり前。中東の文化は中東の国々にかなりの程度共通しています。もっと言うと、これはアラブに限ったことではなく、トルコにもイランにも似通った文化があります。それでも、エジプトには全体的に他のアラブ諸国とはまるで違う空気感が流れています。
そんなわけで「エジプト人って、アラブなの?」とすら思い始めて、リサーチをして書いた記事がこちら:

なんと、遺伝子レベルではエジプト人に含まれる“アラブの血”はたったの 17%‼ これには本当に納得。私が「なんか違う…」と肌で感じていた違和感を、研究が裏付けてくれたような気がしました。
私がこれまで出会ってきたアラブとは、いわゆる「中東のアラブ」(ヨルダン・レバノン・シリア・パレスチナ)で、文化も言語も非常に似ています。これらがまとめて「地中海方言(Levantine Arabic)」と呼ばれるのも納得です。
一方でエジプトは、確かに言語はアラビア語、宗教もイスラム教徒が多数派ですが、方言はかなり独特で、言ってみれば “アラビア語の東北弁” のような印象。そして遺伝子的にはアフリカ人に近い。
…といっても、こういう話をすると怒るエジプト人もいます。彼らの多くは「自分たちはファラオの末裔」だという誇りを持っているので。
とにもかくにも、エジプト人は “中東のアラブ” とはまったく別物。この違いについては、また記事を分けて詳しく紹介していきたいと思っています。
なぜ観光地のエジプト人はうざいのか?
不思議なのは、アラブの中では性格が良いエジプト人なのに「世界三大うざい国」に挙げられていること。
エジプトの観光地という観光地で待ち受けるのは、金に飢えた行商人たち。あのしつこさと押し売り…。外国人ツーリストはまるで「金のなる木」。少しでも多くぼったくってやろうという精神が透けて見えます。悲しいけれど、観光地にいるエジプト人は信用できない、というのが正直な印象です。

このギャップはどこから生じるのか…。この観光地の悪しき慣習は、エジプトの歴史と関係しているのかなと思います。
エジプトが独立した王国を築いていたのはローマに併合されるまでで、その後は長い年月のほとんどを大国の支配下で過ごします。19世紀から20世紀初頭にかけては、イギリスの実質的な植民地でした。こうした植民地時代、エジプト人たちは裕福な欧州人の使用人として働く立場にありました。そこから「外国人にまとわりついてチップをもらう」という文化が根付いてしまったのかもしれません。
アガサクリスティーがエジプトを舞台にした「ナイルに死す」という小説を書いています。発表されたのは 1937 年ですが、上に書いたような情景が映画の中でも描かれています。ちなみに映画の邦題は「ナイル殺人事件」で、1978 年に公開されています。かなり面白い映画です!

その後、エジプトは 1952 年の革命後に外国人排除の方向に動きます。でも外国人からお金をせびり取るという悪しき慣習は世代から世代へと受け継がれて残ってしまったのでしょう。
でも私が日常的に接するエジプト人たちはとても控えめで親切で、エジプトでの生活は想像していたよりずっと心地よいのです。
それだけに、観光地での “うざい” 対応がエジプトの印象を悪くしてしまっているのは、とても残念に感じています。ほとんどのツーリストは、エジプトの本当の良さ、エジプト人の本当の気質などに触れることなくエジプトを後にします。かくして、インターネット上で挙げられる酷評の数々…エジプトはやはりうざい国だった…といわれてしまうのです。
エジプト料理は美味しい
アラブ料理といえば、レバノン料理という風に思われていますが、エジプト料理って実はレバノン料理とは全然違うんです。そして何より、美味しい!

下のインスタ投稿にも少し載せていますが、レバーを炒めた「ギブダ」や鳩にご飯を詰めた「マハシー・ハマム」、ネバネバがすごい「モロヘイヤ」やエジプト人のソウルフード「クシャリ」などなど…どのアラブ諸国にもないエジプトだけのエジプト料理がたくさんあります。
エジプト料理については、また別途で記事をアップしたいと思っております。
まとめ:エジプトは想像以上に面白い!
というわけで、エジプトってすごく面白い。暮らしていても飽きることがありません。そしてヨルダンやレバノンにいた時よりずっと心が穏やかに過ごせているように感じます。これはアラブ世界に慣れている私の経験値なのか、あるいはエジプト人の気質によるものなのか…きっとその両方なのでしょう。
この面白いエジプトをぜひ皆さまにもご体験いただきたいと思っていて、ご旅行に来られる方々を現地でサポートさせていただいています。現在もお客様がエジプトをご旅行中…。誤解されがちなエジプトですが、本当はすごく魅力に満ちています。
私のエジプト滞在がどれくらいの期間になるか分かりませんが、これからも「本当のエジプトの魅力」をもっと多くの方に体験していただけるよう、お手伝いしていきたいと思っています♡