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ベイルートの朝は騒がしい。朝 6 時半、クラクションで叩き起こされて始まる 1 日。「車どかせよ!」と下から響き続けるクラクションは、まさに公害レベル。レバノンでは、音は出した者勝ち‼
レバノンでは、停電と騒音に生活をコントロールされます。
かつて「中東のパリ」と呼ばれた国ですが、実際に暮らしてみると、そのイメージとはまるで別物でした…。インフラが不安定な国では、人は環境に合わせて生きるしかありません。人を逞しくするベイルート生活。私がすっかり騒音に寛容になったのも、騒音の中でぐうぐうと寝ることができるようになったのも、レバノンのお陰なのかもしれません…。
レバノンってどんな国?シリーズでお伝えしています。実際に暮らしてみたレバノンについては、この記事から👉レバノンで暮らすということ① ― プライバシーのない街と濃密な人間関係
ベイルートは騒音だらけ
ベイルートで住んでいた 6 階の私のアパートから見下ろした写真。

住民たちの車が写真のように適当に駐車してあります。特に決められた駐車場がないので、空いているスペースがあればラッキーという感じ。
そんな状態ですから、朝が非常に騒がしい。出勤時間の 6 時半や 7 時くらいになると、クラクションが下から鳴り響きます。出れない車がクラクションを鳴らしまくって、「車、どかせよ!!」とがなり立てるわけです。後続車の持ち主が来て、実際に車をどかすまでクラクションは続きます。
眠っている人がいる、赤ちゃんがいる、病人がいるなどとはつゆほども考えません。とにかく自分が出れないということをアピール。この忌々しいクラクションが毎朝のように 6 階まで聞こえてくるのです。
私はチッと舌打ちしながら、起き上がるわけです。もう眠ってられませんから。アラブ世界では、騒音を出した方が勝ち!!? 音を立てても誰からもとがめられることはありません。騒音に関してはかなり寛容なアラブ世界。なぜって彼らは明日は自分が騒音を出す番であることを知っているからです。
そんなベイルートでは、騒音と共にたくましく生きることが必要でした。
レバノンではコントロールするよりコントロールされる生活
レバノンでは汚職が原因で電気の供給すらきちんとなされません。民間の電気会社と政府が癒着しているのはよく知られた事実。政府は数時間しか電気を供給しません。政府が電気を供給しない時間は、民間の電力会社が電気を供給します。
計画停電ならぬ「無計画」停電が頻発…というか、それがレバノンの日常。1日のうち 3-4 時間は電気がきたかと思えば、次の 3-4 (5-6?) 時間は電気が一切使えなくなります。例えば、朝 7 時ごろに電気がプツッと切れて 4 時間ほど停電し、また電気が 4 時間ほど供給されて、次の 4 時間は停電…などという具合。
しかも電気の切断はかなり不定期で、計画性全くなし。夏の暑い日には蒸し風呂、冬の寒い日には冷蔵庫のようになる家で過ごさなければなりません。
なぜこんなことが起きるのか? 24 時間電気を使えるようにするためには、別の電気会社と契約をしなければなりません。つまり二重に電気料金を支払わなければならないので、電気代はバカ高くなります。お金がない人は、民間の電力会社へ支払うことができません。
ここ数年は、長く続く経済不況で国民の 70% が貧困層に転落しているという統計もありますので、1 日数時間しか電気がない生活を送っているレバノン人も増えていると思われます。
レバノンでは朝は戦場さながらの様相でした。電気がカットされる前に、できるだけ身支度を早く整えるようにしなければなりません。私の場合は、ドライヤーで髪の毛を整えることが最優先でした。これさえ済ませれば、あとは電気がいつ切れても OK!
こんな状況は決して誇張ではありません。実際に住みましたから。私の住んだエリアは大使館関係者などが住むような高級エリアではなく、ごくごく一般のレバノン人が住むエリア。なので、日々苦しむレバノン人の姿を目の当たりにしました。国全体が不況にあえぐ現在はさらにひどい状況になっているようです。
レバノンでは、意に反して様々なことに自分の生活がコントロールされ、それに合わせていくしかありません。電気が 11 時間こないこともありました。
そんなときは、暗闇の中でバッテリー式の小さなライトを持ち歩きながら、インスタントのお味噌汁をズズッと吸い、小さな光を頼りに顔だけ洗い、「バッテリーが切れる前に顔が洗えてよかった」と自分を褒め、1 日が終わる…。そんな生活でした。心の中で「ほんま、こんなことで自分を褒めるなんて、レベル下がりそうやな…」とつぶやいていたことは言うまでもありません。
太陽光発電がかなり普及しているレバノン
とはいえ、昨今のレバノンでは太陽光発電がかなり一般的になってきており、ある程度お金があるレバノン人はこぞってソーラーパネルを屋根に設置しています。これは 13 年前にはなかったこと。太陽光発電が使えるレバノン人にとっては、電力が安定して供給されるために生活はかなり楽になっていると思います。

電気が切れた時にエレベーターに乗っていたら、どうなる?
レバノンでの私のアパートは 6 階にありました。ちょうどエレベーターに乗っていた時に電気がカットされたことがレバノン生活で 2 回あります。エレベーターといっても超ポンコツ。乗っていたある日、ガタンと音を立てて止まりました。一瞬何が起きたか分からず、ドアを押すのですが開きません。
そうです、あの当時、午後 6 時は魔の時間でした。政府からの電気の供給がストップしたのです。ええええ~~ッ? で、私はどうなるわけ??? エレベーターの中のボタンを押しまくりますが、もちろんウンともスンとも言いません。こ、この中に 4 時間もいろと? しかも 4 時間経って電気が回復する保障もありません。なんせ 11 時間来ないこともあるわけですから。
実は常々、不思議に思っていました。エレベーターに乗っている最中に電気が切れた場合、どうなるんやろ~と。通常は一番近い階にエレベーターは止まり、速やかに脱出する、という手順のはずですよね。ところが、あのポンコツエレベーターは全く突然にガタンと止まり、上にも下にも一寸たりとも動かず、あとは不気味な暗闇に取り残されることに。
信じられへん!! と一瞬パニックになりましたが、幸い、同じアパートのどこかの階のおばちゃんに知られる事態となり、救出作戦が始まりました。このおばちゃん、最後は怒って金切り声をあげていたので、どうしてしてくれたか聞けなかったのですが、いずれにしても上からエレベーターの籠 (かご) を少しずつ手動で下ろすこととなったようです。
私の乗った籠はしずしずと下に降りて行きますが、上からはどこまで下りているかもちろん見えませんので (ほんっとにオンボロでした!!)、上から「まだか」「まだか」という怒鳴り声がし、私も中から「まだ」「まだ」と怒鳴り返し…ハイテクなどというものはなく、全ては人間の目と手に頼るしかないのです。
しかもあのポンコツ、1 階まで下ろさないとドアが開かない仕組みになっているらしく、止まった 4 階から最下階まで到着するのにやたらと時間がかかる。やっと 1 階につき、ドアを押しあけることができました!!
その頃には、赤の他人をなぜか助ける羽目に陥った例のおばちゃんが怒って金切り声をあげていて、「電気が止まる時間帯になんでエレベーターに乗るのよ!! 午後 2 時と午後 6 時には絶対に乗っちゃダメェェェェェ!!!」とお叱りを受ける羽目に。こんなことが 2 回も起きて、エレベーターに乗るのが恐怖になりました。
電気の供給が解決されないまま今に至る理由
この電気の問題はもう十数年続いているのですが、なぜこんなに長く放っておかれたのか。これには、レバノン人のプライドが大いに関係していると思っています。お金がある人は、政府と癒着している民間の電気会社と契約をして電気の供給を得ることができます。あるいはソーラーパネルを設置できます。つまり電気が 24 時間使える人は金銭的な余裕がある程度あるということ。
そこでレバノン人のプライドの出番です。「政府は腐敗しているし電気は来ないけど、ま、自分はお金で解決できるから、別にええわ」という無関心・自己愛・虚栄心 。お金がない人は、「可哀そう」だけど、かといって助けが与えられるわけではありません。そんな社会だったので、状況は遅々として改善されませんでした。貧しい人たちの声が届くことはなかったのです。
今は国全体が経済不況にあえいでいるので、改革などが進むはずもなく…。レバノンは、私が住んでいた時よりずっと厳しい状況にあります。
レバノンでは付け毛が大活躍
中東で苦労したことの一つは、美容室を見つけることです。ヨルダン、レバノン、トルコで何件か試しましたが、まぁひどい頭にされるのです。アジア人のストレートヘアの扱いに慣れていない美容師たち。
くせ毛の扱いには慣れているのでしょうし、ドライヤーでくるくるの巻き毛にするなどはお得意。でもサラサラのショートボブなどはほぼ扱うことがありません。
こんな髪型にしてくださいと写真を見せても、その通りになった試しがありません。中東で気に入ったショートヘアやボブにするのは至難の業。美容室に行った後は泣きたくなるのが常。
レバノンではその上、電気が突如カットされ、ドライヤーすらまともに使えないような生活…。伸びてきた中途半端な髪に付け毛をすることで乗り切るとかなりうまくいくことに気づきました。伸びてきたボブを無理やり後ろに束ね、付け毛でカバー。この方法でレバノン生活がぐっと快適になったことは言うまでもありません。

その後、トルコに住んでいた時にハサミを買い、セルフカットに踏み切りました。6-7 年以上経った今でも、海外ではセルフカットを続けています。もちろん、日本に一時帰国した時は、まず美容院に駆け込みますけどね☺
さて、次回のレバノンシリーズでは、食文化と生活習慣についてお伝えしたいと思います。
この記事を書いているのは、ヨルダン・エジプト・中近東専門ツアープランナー(現地17年)のPicturesque Levant です。公式サイトはこちらから。
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